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見えない眼に見えるもの

10年以上、夫が通院してきた大学病院の眼科の主治医に、
「今後は、お近くの眼科医で診てもらうようにしてはどうでしょう・・・」
と言われた。
「いえ、私たちは構わないんですよ。
 でも、今日のように長時間待っていただいても、結局、検査もできないようなら・・・」
そうなのだ。
大学病院の眼科で、定期的に夫は目の検査をしてきた。
しかし、現在はどの検査もできなくなってしまった。

視力検査はかろうじてできる。
右眼が、もう、ほとんど見えない。
10センチぐらい近づければ、なんとか C の空いている方向がわかる。
しかし、30センチ離すと、どこに対象物があるのかもわからないようで、目が宙を泳いでしまう。
右眼の視力は0.03だとか書かれていたようだが・・・
私も両目とも悪くて、とりわけ右眼の視力は0.02だけれども、全体がぼやけてしまっていても、見るべき対象物がどこにあるかは分かる。
しかし、夫の場合は、右眼では見るべきものがどこにあるのかを見つけられない。
左眼だと、右眼の時とは違って、ちゃんと反応して、C の空いている方向を指し示すので、認知症によって視力検査の意味が理解できないのではないことが分かる。
想像するに、右眼は視野が極端に狭くなっているのではないかと思う。
だから、視野が狭すぎて、見るべき対象物を見つけ出すことができない。
見えないので、目がとろ~んとなってしまい、しまいには目をつぶってしまう。

眼圧を測る検査(空気が瞳に当てて測るタイプ)や、その他、眼底の網膜や視神経の状態を写真に撮る検査は、目を開けて、定められた一点を見続けることができない(耳が聞こえないから、見続けるように言葉で促すこともできない)、瞼が瞳にかかってしまうので、瞼を検査技師が指で押し上げなければならないのだが、触られるのもイヤ。目に光を入れられるのもまぶしくてイヤで、検査台から顔を外してしまう。ムリヤリ押さえつけると、泣き出してしまう。
午前10時の予約で、9時半には入って、いろいろ検査をやって、何の成果も得られず、主治医の最終診察時間が午後1時半。
4時間もかけて、あれこれ検査を試みても、結局、たいして何もわからないのなら・・・ね?

ただ、主治医が言うには、眼科医には定期的に眼を診てもらって、新生血管が出てきていないか等を確認したほうがいい。
いろいろな機械を使った検査はどうせできないのだから、自宅近くの(待たされない)眼科医で診てもらう方が楽ではないかという意味なのだ。
私が、何とも返答をしないでいたら、「まあ、一応、12月に予約は入れておきますが・・・」と。

返答をしなかったのは、反対しているわけではない。
それが現実的な対応なのだと思う。
それに、今まで長時間待たされても、頑張って通院してきたのは、白内障手術を全身麻酔でやる可能性があったからだけれども、夫の右眼が見えなくなった原因は、おそらく白内障ではない。
主治医が言うには、右眼のほうが左眼よりも確かに白内障は進んでいるが、これほどの視力に差が出るほど白内障が進行しているわけではないというのだ。
白内障の手術をしても、右眼が今よりも見えるようになる保証がない。
そうであれば、敢えて、全身麻酔のリスクをおかしてまで手術を決断することはできない。
となれば、大学病院の眼科にムリに通院し続ける理由がなくなったということだ。

夫は耳がまったく聞こえないから、眼は外界から情報を得るための大事な窓だ。
その右眼がほとんど見えなくなってしまった。

手を洗わせようと、洗面所に夫を連れて行き、水道の蛇口をひねって水を出しても、夫はぼ~っとしている。
夫の手を、蛇口の下に持って行き、水に触らせると、そこで初めて「あっ、水が出ている!」と驚いたような顔をする。
夫の眼には、白い洗面台と蛇口から流れ出る水は一体化してしまって、見えないらしい。
もし、耳が聞こえていたら、耳で「あっ、水が出ている!」と分かるのだろうが。

夫の眼はよく見えないので、そこにないものを、あるもののように見る。
「そこに居るのは誰?」と、誰も居ないところを指さす。
「そこに猫が居る!」と、猫の居ないところを指さす。
「雪が降っている」と、この猛暑の8月に言う。
「川が流れている」と、室内で言う。
夫の眼は、空間に見えるぼんやりとした色や形から判断して、それが何かだと判別する。
もし、認知症がなければ、仮に、よく見えない眼にそれが雪であるかのように見えたとしても、
「今は暑い夏だし、しかも家の中に居るから、雪であるわけがないよなぁ?
 では、何かなぁ?」
と、自分の眼に見えたものが、現実にはあり得ないはずだから、自分の見間違いだろうと訂正するのだろうが、夫にはそういう訂正機能が働かずに混乱する。

「雪じゃないよ。もっと近づいて見てごらん」とか、
夫が、猫だと指さす方向にある、黒っぽい服だとか、丸い物だとかを私が手にとって、「これのこと?」と夫の近くに持っていくと、「あれ?」
「見間違いだったね?」

こういうのを幻視というのだろうか?
何にもないわけじゃない。
何かはある。その色や形が、眼や脳できちんと捕らえられなくて、ぼんやりしているのを、自分の頭の中で、それに近い、別の物だと認識しているだけ。
だから、ちゃんと見えるような場所まで近づいたり、近くに持ってきて見せれば、「見間違いだった」と訂正がきく。
厳密に言うと、こういうのは「幻視」とは言わないんじゃないかな?


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コメント

No title

ゝ主治医が言うには、右眼のほうが左眼よりも確かに白内障は進んでいるが、これほどの視力に差が出るほど白内障が進行しているわけではないというのだ。

って事は、程度の問題もあるだろうけど、白内障でもあるんですよね。
全身麻酔のリスク、どうなんだろう。個人的にはそんなに怖くはないと思うけど。
右目だけでも手術すれば、旦那さん何かが変わって、世界が広がると思うけど・・・。
いやいや、こればかりはアワキビさんと、先生の考えが一番!
良く考えてみてくださいね。

No title

病院での長い時間は辛いですね。
「対象なき知覚」は幻視ですね。対象が存在しなくても、ありありと見えるらいしいですね。「錯視」だと見間違いですよね。ゴミが虫に見えたり、丸めてあるシーツを動物と勘違いしたり、壁の模様を人の顔だと見誤る、などなど。(小阪医師の本より)幻視は多彩ですね。
ベッドの縁を小人が隊列を組んで歩いているのはDLBの方から直接聞いたことがあります。自分で表現できませんが、優子さんも数年前から幻視があります。

No title

こんばんは
御主人の目も心配ですね。
我が家も夫は一昨年糖尿病性黄斑症になり硝子体に注射をする治療をしましたが一時的には良くなり今年4月くらいまで2カ月おきに診てもらっていました。良くなったり悪くなったりしながらも落ち着いて(注射するまでも無い)いましたが検査が難しくなり違う方法でやりますからと言われていましたが治療をしてもその後のフォローが大変です。
今は寝たきりでテレビも見ようとはしませんし病院に行くのも大変。どうしようか思案中。
それでも目が見えづらくなる事は辛いことなのかとまた久しぶりに行ってみようかと思っているところです。
御主人の白内障の治療も全身麻酔になると戸惑うのも分かります。
アワキビさんのお体もおいとい下さいね。

サザンカさん

そうです、白内障は勿論あります。
全身麻酔のリスクについても、全身麻酔に関する本も読んだことがあるので、それほど恐れるものではないことも承知しています。

大学病院の医師が、夫に白内障手術を強いては勧めない理由は、全身麻酔のことでも、手術のことでもなく、手術後のことなのです。
手術後、もし眼に何らか異変があった時には、直ちに検査をして対処しないといけないところ、夫の場合、検査自体がうまくできないので、緊急対応ができない、万一の時には失明するリスクがないとは言えない・・・と懸念しているのです。

サザンカさんがおっしゃるように、右眼だけでも手術をしたら・・・と私も医師に言ったのですが、医師は、右眼は手術をしても見えるようにならない可能性が高いと考えているようで、右眼だけではあまり意味がないと言います。

夫は耳が聞こえないので、眼はとても大事。
私としてもとても悩むところです。

のんた2号さん

ああ、やっぱり「錯視」なんですね。

私、漢字の見間違いで別の単語に読んでしまうことがあります。でも、見た瞬間「え? そんなはずはない」と、よく見直すと、な~んだ!やっぱり見間違いだった・・・ということが最近増えてきました。
時々、眼の端に映った物を別の物に見間違えることもあります。
昔はそんなことはなかったのに・・・DLBの素質があるのかしら?とちょっと思ったりします。

夫は、日常生活の中での「錯視」が多いです。
けれども、体調が悪くて意識レベルが低下しているときは、ありありとした幻視を訴えることもありました。
入院した病院のトイレの中で、「今、ボクの太股の上にたくさんの蟹が乗っかっていたけど、さぁ~っと消えちゃった」とか。

「さっき、そこにあった舟はどこにいったの?」と、どこにもない舟(模型の大きな舟らしい)のことを話すことがあり、この場合は、幻視というより、眼は開いていても夢を見ているような状態かなぁ?
今、そこに見えるとは言わない、さっきあったはず・・・と。

優子さんの数年前からの幻視に気づかれたと言うのは、何か手で掴もうとしたり、振り払おうとしたり・・・といった仕草などが見られたのでしょうか? どんなふうにして優子さんが幻視を見ていると気づいたのでしょう?

mjijiさん

こんばんは。だいぶ涼しくなってきましたね。

ご主人も検査が難しくなってきましたか・・・

今思ったのですが、夫が通っている大学病院の眼科には、乳幼児の患者さんも多く受診しています。赤ちゃんは、診察の時にはいつも大泣きしてとても大変そうですが、それでもちゃんと検査や診察をしているのでしょう・・・

この間ちらっと見たのは、赤ちゃんに、ぴかぴか光ってぐるぐる回るおもちゃを見せて注意を引いている間に、眼の中を観察しているようでした。

乳幼児の眼科の検査・治療ができるのであれば、認知症の夫にも、同じ方法で検査をしたりできないものなんだろうか?と。

うちの夫もテレビを見ないんです。
テレビに関心を持って見てくれたら、その時間、私もいろいろできるだろうと思うのですが、私がテレビを見ている時は、夫はたいて眼をつぶって寝ています。
時々、眼を開いている時に、テレビを指さして「ほら、あれ、見て! ○○だよ~」と言っても、すぐ横にテレビがあるのに、テレビ画面を見ず、テレビの隣の棚を見たりしているんです。そういう時はテレビが点いていることにも気づいていないようです。(夫は耳が聞こえませんからね。)

ご主人を病院へ連れて行くのは、介護タクシーを頼んで、それと長時間待たされる(?)ことを覚悟の上で行かねばならないのですから、大変ですよね。
行くべきか、行かなくてもよいか、ご主人のご様子と、mjijiさんの気力・体力もはかりにかけながら、その時に一番良さそうなことを選んでいくことになりそうですね。
私も、どちらと決めつけてしまわず、状況も変わりますし、その時々でベストと思えることを考えながらやっていこうと思います。

mjijiさんこそ、介護疲れが溜まりませんように、どこかで息抜きや発散なさってください。

No title

こんばんは~🌙

ゝ医師は、右眼は手術をしても見えるようにならない可能性が高いと考えているようで、右眼だけではあまり意味がないと言います。

知人の旦那さんは、5,6年前に片方白内障の手術して、一昨年、医師から、こっちは殆ど見えてませんね、と言われて、もう片方やりました。
片方は良く見えていたようで、不自由は感じてなかった、と彼女は云ってましたが・・・
旦那さんは、自ら見えない、とは言えなかったけど・・・

そんな旦那さんも、今年の1月に亡くなりましたが・・・。

姉も両目一緒の手術前の検査は、殆ど出来ないまま全身麻酔で臨みました。

でも、旦那さんの目の状態と色々違いがあるだろうし?
一応お話しだけでも・・・あまり深刻にならないで下さいね。

サザンカさん

サザンカさん、再度コメントありがとうございます。

お姉さんの白内障手術の際は、サザンカさんも病院に泊まり込んで一睡もできず見守りをして、大変でしたが、その結果、よく見えるようになられて・・・本当に良かったです。

うちの夫は睡眠時無呼吸症候群もあり、人工呼吸器を外した後は、すぐにASVという呼吸器に付け替えなければいけないとか、全身麻酔は1回にしたいから両眼一緒にやったほうが良いけれども、耳が聞こえないので、手術後の眼帯のこととか(まあ、プラスチック製のものもあるようですが、直後2時間ぐらいはガーゼが必要だと医師に言われました)両目とも見えない時間が2時間でもあるとパニックになりそうだとか・・・、その他、乗り越えなければならないことが数多くて、これらの困難にチャレンジする気力が・・・今はちょっとありません。

うちも夫の認知症がこれほど進む前だったら、できたのかも?と思いますが、その頃は、私もまだ仕事をしていて、夫も小規模多機能を使わずに、週に2回の半日デイと2回の訪問ヘルパー1時間半を利用していた頃で、手術後の目薬を一日に複数回点すことができなさそうだったので、先延ばしにしていたのです。いずれ、私が仕事を辞めたら、手術をしたらいいや・・・と。

白内障手術にしても、歯科治療にしても、認知症が判明したら、できるだけ初期のうちに治療を進めて治しておいたほうが良いのですね。

私も、将来に備えて(?)、今、歯科治療中。歯もあちこちガタが来ていて、順番に治療していますが、まだまだ時間がかかりそうです。

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Author:アワキビ
夫と2人暮らし。
子どもはいません。
2人と猫2匹の家族です。

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